ときに水面を眺めながら

そんなに美しくもないし優しくもない人生

白い花、狂宴の庭

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高冷地の春は遅い。
山に囲まれていると太陽が山から顔を出す時間も短いから、この時期の庭はまだまだ日陰が多くて暗いのです。
だから輝くように白いヒヤシンスを植えました。

球根は十数年かけて少しずつ増やしたので、ときには植えたことすら忘れてしまうのだけど、季節が廻ると庭のあちこちから顔を出す。
白い花が咲きだす頃、小さな庭はヒヤシンスの甘い香りでいっぱいになる。

 

一方でクリスマスローズは下を向いて、密やかに控えめに咲いている。

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「どんな色の花が咲くかわからない」という小さな苗を買い求めて3年後、透き通るように白くて可憐な八重咲の花が咲いたときは感激してしまった。

うつむきながら密やかに咲く花をカメラに収めるために、毎年私はカメラを抱えて庭に寝転ぶのだけど
(/ω\)庭でオバサンが倒れてるって、事件みたいじゃない?(死んでません)


枯れ色の庭に楚々とした白い花が咲き始めると、突然庭が息を吹き返したかのように緑で覆われ始めていくから
春は楽しい。

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初夏は淡いピンクから青紫まで、色とりどりの花が華やかに咲きそろう。
中でも大きな花穂のルピナスや鮮やかなオールドローズが主役。それらの間で水彩画のように優しい色の草花が揺れて、庭は私だけの花園になる。

花々の香りに包まれて蜜蜂は飛び交い、私は時間の許す限りカメラを持って可愛い蜜蜂を追いかけるのです。

 

そんな浮き立つような賑やかな庭も、やがて梅雨の気配とともに一変。
雨を境に鮮やかな花びらは散り、遅咲きの野ばらの蕾が次から次へと咲き始めて、静かな白い庭になる。

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白い花、白い花。
なんて綺麗なんだろう。
雨に濡れる姿も優しくて清らかで繊細で。

梅雨の晴れ間の蒸し暑い日も涼やかに咲いて目を楽しませてくれる。

 

例年だとアナベルも咲くのだけど、アナベルは雨に当たると花が倒れこんでしまうし、旺盛に成長して藪になってしまう。
蛇なんかも入りこんじゃって手に負えなくなるので、今年は花が咲く前に刈り込んでしまった。
蕾が付く前に刈り込むと8月の終わりに咲き始めるので、今はただ楽しみに待つしかない。

その代わりに、今年は柏葉アジサイがたくさんの花をつけてくれた。

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この花は淡いグリーンから純白へ、そして盛夏の頃には穂先がほんのり赤色に移り変わる美しい品種。

円錐形の花穂は咲き進むにしたがって重くなり下を向くのだけど、花がみっしり詰まった大きくて豪華な花穂がたくさん咲きそろうのも魅力の一つ。

長い花期の間に何度も花色が変わるのが面白くて、毎年目が離せないのです。

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植木屋さんで小さな小さな苗を買ってきて、たくさん花が咲くまでかかった時間は10年。
以外に気難しいけれど、咲き姿は気品があって美しいのでそれで十分です。

花も庭も人も、
ゆっくり時間をかけて成長するから美しいのではないでしょうか。

狂宴の庭

色とりどりの花が咲く庭も素敵だけれど、白い花が咲き乱れる庭も負けず劣らず美しい。

光に透けて白く輝く花も綺麗だし、雨にしっとりと濡れる姿にも趣きがあるし、茶色く枯れていくのもまた潔い。

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雨の季節の庭は、白い花咲く狂宴の庭。
薄暗い雨の日も・夜の闇の中でも、白い花々は美しく浮かび上がって目が離せなくなる。
白い花の魅力は尽きないのよね。

 

さぁ、梅雨が終われば白い花の季節も終わり。
もうすぐ燃えるように熱い夏が始まるよ。