漆器は高いと思う。
漆器の美しさ、軽さ、つややかさに魅かれていろいろ買って使い比べてみたことがあります。
まず、漆器が出来上がるまでの工程をみてみるとわかるんですが、漆器産業は分業です。
- キコリさんが木を伐り出してくる
- 木材のゆがみをとって製材(数年かかるらしい)
- 成形
- 漆の下地を何度もぬる
- 漆の仕上げをする
- 売る
漆自体も木から採取して漆の液を作る人がいる
ざっと簡単に上げただけでもこれだけの工程を経て時間をかけて作られているし、多くの職人さんが携わっているので高価になりやすいのはうなずける。
しかしあまりにも高価なために、近年漆離れが深刻になってきました。そこで色々な工夫を凝らした漆器が登場するようになります。
例えば木の粉を固めて作った木粉という素材を圧縮加工した器に本漆をぬった漆器。
これは1と2の工程が無く、成形も機械を使用して加工することが多いらしいので、そのぶんお手頃な価格になる。木材をくりぬいたりしていないのでそのぶん軽く、器などに適している。
もう一つはカーボライトなどの樹脂を成形して、そこへ漆様のウレタン樹脂を塗布(吹き付け)した製品。これも現在は漆器と呼ばれる。見た目は明らかにプラスチック製品のものや、一見すると素人には本漆にしか見えない高品質なものまで様々に出回っている。全ての工程が従来の工程ではなく、工場で大量生産できるため低価格帯を中心に市販されている。
さて、材質や工程の違いについて非常に大雑把に説明してみましたが、次に漆とウレタン樹脂の漆器はどう違うのか説明していきます。
本漆とウレタン樹脂の漆器の違い
本漆の特徴
本漆は天然樹脂のため湿気のあるところで保存するのが鉄則です。乾燥しすぎるとひび割れをおこすことがあります。また、購入時には漆独特のツヤはなく、表面はなめらかだがどちらかと言えばマットな表情をしている。長年使用していくに従い、次第に漆独特のつややかな光沢を持つようになるのが特徴。(最初から油で砥いでツヤをだしている漆器もある)
使いはじめは、まだ表面の漆が若くてやわらかいためキズがつきやすいが、数年かけて乾燥し固くなりキズに強くなるのが本漆。下地として何重にも漆を塗り重ねて作られているので、使用中にについた細かいキズも長年使用していくにしたがって磨かれて見えなくなる。従来の工程で作られた高品質な漆製品は欠けたりはげたりしたら職人に直してもらうことも可能。木をくりぬいて作られた器などは長年の使用で木がわれてしまうこともある。まさに生きた器。
急に熱い汁ものをいれたり、漆盆に熱い器を乗せると変色するので繊細な扱いも必要。
最近はカラー漆も出回り、ガラス製品と漆のコラボも見られるようになった。
ウレタン樹脂の特徴
ウレタン樹脂は最初からツルツル・つややかな美しい光沢をもった表面をしています。カラーのバリエーションも豊富で、様々な絵柄が美しく描かれたウレタン樹脂の漆器が多いです。
数年かけて作る従来の漆器と違い、工場で大量生産が可能なため比較的低価格なのも魅力。
ウレタン樹脂なので使用するとキズがつきます。長年使用することで目に見えないような細かいキズもたくさんつき、表面が曇って汚くなります。はげ落ちたりしても修復はできません。
ウレタン漆器のお重などはカーボライト等で成形されているので、従来のお重に比べて重いのが特徴。
ウレタン樹脂だと汁ものなどの熱湯で表面の色が変わりにくいので扱いに気を遣わないのがいい。ただ、こども、孫へとつないでいく器にはなり得ません。
ざっとあげてみました。今の時代は子々孫々までのことを考えて大量の漆器を揃える必要がないので、ご家庭の使用頻度を考えて本漆とウレタン樹脂を使い分けていかれるといいと思います。
以上、コラム 本漆とウレタン樹脂の漆器の違いをご紹介しました。
漆の折敷はこちらをご覧ください。ウレタン樹脂も今はここまで美しい