ときに水面を眺めながら

そんなに美しくもないし優しくもない人生

文章を書くことが仕事だけれど

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「いい加減、きちんと働きなさいよ」
母からは、よくそんなことを言われる。

きちんと働いているんだけどな。と私は思うのだけど、
コツコツと働いてきた団塊の世代の母には、私が毎日家でのんびりパソコンをやってるようにしか見えないらしい。

WEBライターって、今でも世間的にはそんなに身近な仕事じゃないようだ。

 

今思えば私が「WEBライターの募集に応募したい」と相談したときの、夫の反応もいまいちだった。
「やりたいならやってみれば? でも、そういう仕事って月に1万も稼げないと思うよ。」

いつだってそう。
誰も私の仕事を応援してくれない。

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WEBライターといっても仕事の形態は様々。
ランサーズなどに登録してネット上だけで仕事を受ける人もいるかと思うが、私は地元に実店舗を置く会社専属のライターです。
たまたまウェブショップのライターを募集していたのを見かけた私が応募して、面接と文章テストのうえ採用が決まった。

このお店はオシャレな海外雑貨などを扱っているので、どうも女性を中心に地元でも人気があるらしい。
専属のライターになって4年になるけれど、お店を知っている人の多さ・お店の印象の良さに今でも驚くのです。

私が働いていると知られると私自身も憧れの目で見られてしまうので、普段の立ち振る舞いや言動に気を付けるようになりました。

 

もちろん待遇も悪くない。
仕事の性質上、出来高になってしまうので簡単な比較はできないのだけど
時給計算すれば、収入はパン屋で働いていた時の2倍以上になった。

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WEBライターに採用されて気が付いたことと言えば、自分の専門知識が圧倒的に少ないこと。

お店では専門の商品を扱うので、アンティーク・歴史・美術・インテリア・工芸・建築…そういった本を図書館で片っ端から借りて勉強しました。

学生の頃、論文をたくさん書いていた私としては、知的好奇心を満たしてくれる勉強や資料集めはとても楽しかったのよね。
 

私に任されているのは使い捨ての量産記事だったけれど、量産記事にはもったいないほどの内容を盛り込んだのを覚えてる。

お客さんには、ときめくような買い物をしてほしい。
心にキラキラした欠片が突き刺さるような、そんな文章を読んで欲しい。

そして同時に私はこんな野心も抱いていました。
『どうしても彼女に書かせたい・彼女の文章を読みたい』と思わせてみたい、と。

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採用から2年後のある日、担当からこんなメールが届きました。
「当店のWEBショップに掲載するコラムをかいてくれませんか」


夢のようなメールに、心は踊るが不安も大きい。

私が書いていいのか、本当に私でいいのか。
なにしろ、私は平凡なオバサンである。

しかし打ち合わせの際、役員の一言が私に突き刺さりました。
「あなたの書いたものが読みたい」

その一言が私の心に火をつけて、コラムも手掛けるようになりました。
仕事のパートナーとして自分の能力を求めてくれるのが、純粋に嬉しかったんだと思う。

 

コラムは知識も教養も感性も試されているように思う。
そしてそれを言葉にする能力が必要だし、伝わるように書く技術も必要だと思う。

こんなに専門性の高い難しい仕事なのに、今日も私はぼんやり庭を眺めてる。
本当は頭の中はパンク寸前のフル回転だけど、それは私しか知らないこと。

そしてまた母は私に
「そろそろ真面目に仕事をしなさい」と言う。